撮影:谷中健一
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walk on ザ・トヤ曼荼羅!
リバーサイドに三途が出現 !?
紐解け歴史。讃えよ生命。

──歴史を紐解き、命を祝祭する舞台がここに。

「東京キャラバン in 富山」は、リーディングアーテイストに木ノ下裕一、振付・演出に北尾亘を迎え、11月3日(日・祝)の富岩運河環水公園内の野外劇場におけるパフォーマンスと、11月4日(月・休)の富山県美術館での展示・実演という二部構成で開催された。

3日。パフォーマンス『walk onザ・トヤ曼荼羅!』

会場となった富岩運河環水公園は、自然と人、緑と水辺の調和を目指した公園である。その野外劇場は、舞台の後方に富岩運河が流れているという独特なロケーションにある。

観客は420人。定刻を迎えると、舞台の下手からそろりそろりと人々が歩いて登場する。トランクを持った者、リュックを背負った者、自転車に乗った者、そして薬売り……彼らはここに漂着してきた者たちの行列のようだ。

そこからおもむろに、ダンサーが一人、また一人(下島礼紗、山田茉琳、米田沙織)と踊り出しては、行列の中に戻っていく。二人の男(パフォーマーハルキ、ジャック・リー・ランダル)は、大きなトランクを挟んで、ユーモラスなパントマイムを見せていく。

パフォーマーハルキはトランクから幾つもの球を取り出すとジャグリングを始め、ジャックはバスマットのパペットに命を吹き込み、犬が駆け回るように操っている。その様子を見守りながら現れた男女(夏目慎也、西田夏奈子)が、国の成り立ちを語っていく。

そこに行列にいた者たちも加わり、彼らはステージ後方に流れる運河の向こう岸を見つめる。共に国づくりをはじめたオオクニヌシの神とスクナビコナの神。しかしスクナビコナの神はある日忽然と姿を消してしまう。

そうした物語が語られると、デジタルなビートをバックに、ダンサーと富山スペシャルコーラス トヤマイメンの面々が流れるような踊りを繰り広げ、さらにパフォーマーハルキ、ジャックのパフォーマンスが交差する。郷愁をそそるように響き渡っているのは、今回の音楽を務める音楽家・雅楽演奏家の太田豊が吹くサックスの音色だ。

やがて舞台後方に現れたのは、越中いさみ太鼓保存会の面々である。いさみ太鼓とは、富山県砺波市で昭和27年から有志により受け継がれてきた郷土芸能で、雄大な太鼓と笛の音にちゃっぱ(和太鼓シンバル)というアンサンブルだ。彼らのレパートリー「流星」の勇ましい太鼓の音に、客席では観入る人、自然と手拍子を打つ人と様々だ。しかし演奏が終わると、客席からは一斉に大きな拍手が起こる。

演奏はさらに「いさみ打ち」へ入ると、ダンサーたちが大いに踊り、文明が生まれるまでの物語が語られていく。

やがて舞台には富山スペシャルコーラス トヤマイメンの面々が整列し、電子ピアノの伴奏とともに「大地讃頌」の合唱が始まった。伸びやかで力強いコーラスによって静かな大地を、母なる大地を讃えよという歌詞が歌われると、やはり観客から大きな拍手が起こった。

次いで、太田の笛の音と越中いさみ太鼓保存会の大太鼓による竜笛「小乱声」の演奏に呼び込まれるように登場した西田と夏目が「道行」「白鷹」「月の輪熊」「賽の河原」「地獄めぐり」「仏の来迎」と章立てされた佐伯有若、有頼親子による「立山曼荼羅」の物語が語られる。

舞台後方ではジャックが操る白鷹とダンサーたちが立山を越える様、三途の川を渡る様、国をつくりし人々が罪に苦しみ、地獄で苦しむ様、さらには仏の言葉などが身体で表現されていく。佐伯有頼は『立山開山縁起』に登場する人物で、立山開祖の人物として知られている。熊に姿を変えていた阿弥陀如来の言葉から、有頼は慈興上人となる。

「立山にふり置ける雪を常夏に見れども飽かず神からならし」

この一節が語られると、舞台では、職人が技を伝承していく「文明」の模様が始まる。高岡第一高等学校ダンス部CADのメンバーを含むパフォーマーたちの動きは加速し、歴史が急速に流れていく様が表現されていく。西田はバイオリンを奏でている。

「いそげ」「いそげ」「もうここにはおれん」「いそげ」。人々は駆け回り、物語は風雲急を告げる。

一転。静まりかえった舞台の中央で、パフォーマーハルキのコンタクトジャグリングを披露する。手が触れたままの状態の水晶球が、まるで生き物のように回転を続ける神秘的な模様が続く中、富山スペシャルコーラス トヤマイメンによる「心の中にきらめいて」の合唱が始まった。

ジャックの操る白鷹に誘われるように富山スペシャルコーラス トヤマイメンの面々が去ると、アクティブなビートとラップが鳴り渡る。「三途のリバーサイド」(曲・ザ・おめでたズ)をバックに、ダンサーと高岡第一高等学校ダンス部CADの面々が客席通路を踊りながら練り歩く。彼らは舞台で合流すると、息の揃ったダンスパフォーマンスを展開していく。そこに西田、夏目、北尾亘、越中いさみ太鼓保存会が入り乱れる。

彼らは向こう岸に向かって手を振っている。気付けば夏目とジャックの白鷹、パフォーマーたちが運河の上に架かる橋を渡り、対岸へと降り立っていた。

向こう岸には橋を通って、長大な白い布が渡されている。運河を挟んで、夏目と西田が言葉を交わす。それが三途の川を挟んだやり取りであることが伝わってくる。

そして本編はいよいよ終盤へ。ジャックの白鷹が羽ばたく中、富山スペシャルコーラス トヤマイメンの合唱「瞬きもせず」が歌われる。客席では北尾が舞い、対岸では夏目が白い布の上を歩いて徐々に遠ざかっていく。太田のサックスソロ、対岸と繋がった白い布の上で歌う西田の独唱が響き渡る中、パフォーマーハルキのファイヤーパフォーマンスが繰り広げられていく。

国づくり、立山開山を経て、瞬きのような人の一生がここに表現されている。独唱と合唱がさらなる力強い合唱となって、本編は幕を閉じた。観客からはパフォーマーたちを讃えるような拍手が送られた。エンディングではいさみ太鼓とサックスに合わせて、演者一同が踊り交わり合う。出演者62名で一度限りの舞台の成功を祝い、舞台は大団円を迎えたのだった。

4日。展示・実演

パフォーマンスの翌日、富山県美術館で行われた展示・実演は、リーディングアーテイストの木ノ下裕一がMCを務め、「東京キャラバン in 富山」のメイキングから実演までを伝える、言わば報告会のような時間が設けられた。

事前の準備で「富山の歴史にハマってしまった」「搾取といったネガティブな歴史を経た、富山の“知恵深さ”に興味が湧いた」と語る木ノ下。『walk onザ・トヤ曼荼羅!』のwalk on、つまり“歩く”は、薬売り、登山、行、立山信仰から、“ザ・トヤ曼荼羅!”は立山曼荼羅から着想を得たと、彼は柔らかな語り口で丁寧に説明していく。

途中からは北尾亘も登場。「東京キャラバン in 高知」も手掛けた二人から、あらためて東京と地方のアーティストが“文化混流”していくという「東京キャラバン」の成り立ちが説明され、前日のパフォーマンス映像とリハーサル映像を見ながらの解説やトークが展開された。土地の歴史と様々な文化、あらゆるパフォーマーの邂逅によって生まれる、「東京キャラバン」の魅力が語られていった。

映像解説が終わるとパフォーマーハルキ、太田豊が登場。パフォーマンスの感想とメイキングの模様、富山の観客への感想が語られ、太田が笛を実演した。今回のために特別に編成された富山スペシャルコーラス トヤマイメンが登場。全28名のメンバー構成が説明され、パフォーマーハルキ、太田、富山スペシャルコーラス トヤマイメンらによる実演が披露された。

富山チームに続いては、東京からのパフォーマー(夏目慎也、西田夏奈子、下島礼紗、山田茉琳、米田沙織)らによるトークで、パフォーマンスの感想から富山の人々との創作の感想が語られた。「楽しかった」「贅沢な時間だった」。思い思いに語られるメイキングのエピソードからは、いずれも充実感が伝わってきた。

最後は、一同であらためて前日のパフォーマンスから「瞬きもせず」の再演と、「三途のリバーサイド」のパートが再演され、観客の手拍子が美術館のフロアいっぱいにこだました。

その昔、富山は物流や信仰などあらゆる側面から周辺諸国へのハブ的な役割を果たした。そんな富山の歴史への敬意と再発見を描いた、躍動に満ちた2日間だった。

(取材・文/内田正樹)

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開催概要

開催日時・会場

〈パフォーマンス〉
2019年11月3日 富岩運河環水公園・野外劇場

〈展示・実演〉
2019年11月4日 富山県美術館

リーディングアーティスト

木ノ下裕一(ドラマトゥルク・「木ノ下歌舞伎」主宰)

参加アーティスト

北尾亘(振付家・ダンサー・俳優・「Baobab」主宰)、下島礼紗(ダンサー)、夏目慎也(俳優)、西田夏奈子(俳優)、山田茉琳(ダンサー)、米田沙織(ダンサー)、越中いさみ太鼓保存会、太田豊(音楽家)、ジャック・リー・ランダル(パペット)、高岡第一高等学校ダンス部CAD、富山スペシャルコーラストヤマイメン、パフォーマーハルキ

参加クリエイター

青木兼治(映像)、清川敦子(衣裳)、ザ・おめでたズ(ラップバンド)、平良伊津美(編曲)、高岡伝統産業青年会、谷中健一(写真)、山口九乗(おりん)

主催

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、富山県

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