撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
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撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
撮影:石川拓也
よさこい、雅楽、カポエイラ、太鼓、
初秋の高知で描かれた“夢幻”の物語

──過去と未来を繋いだ“夢幻”の一夜。

9月16日(日)、高知県立美術館・中庭で、「東京キャラバン in 高知」が開催された。

今回のリーディングアーティストを務めるのは「木ノ下歌舞伎」主宰・木ノ下裕一である。「KOCHI KARVAN夢幻行脚 !!」をテーマに、古典演目を現代的解釈で上演することで知られるドラマトゥルク(※1)が手掛ける一度限りのステージは、定刻17時30分、意外な展開で幕を開けた。

唐突にテレビ番組のディレクターらしき男性(大石将弘)と誘導係らしき女性(安部萌)が現れる。彼らが会場に拍手のリハーサルを促していくと、追って司会役の男女(澤田慎司、米田沙織)が現れ、彼らが番組名をコールする。
「第142回 歌って走ってキャラバンバン!!」。
高知には、かつて『歌謡選手権・歌って走ってキャラバンバン』(※2)という人気番組があった。つまり、このオープニングは、それをモチーフとした遊び心というわけだ。

二人から今日が“2118年”の9月16日であることが告げられると、最初の出場者が登場。のど自慢を披露するのは「山田太鼓伝承会」だ。続いて「カポエイラバトゥーキジャパオ高知」「繁藤雅陽会」「高知県庁正調よさこいクラブ」の面々に、木ノ下と共に今回の演出の中枢と振り付けを担った「Baobab」主宰・振付家・ダンサー・俳優の北尾亘が登場して、次々にポップスののど自慢やコメントを披露していく。しかし最後には出場者たちが入り乱れて、番組は混迷したままフェードアウトしていく。

ステージは喧騒から一転。星を模した纏まといが現れると、雅楽と太鼓の荘厳な演奏をバックに、少女(浜田あゆみ。劇団「ふたりっこプロデュース」)が語りを始める。生命の創造を記した故事のような語りに、躍動的なカポエイラの舞踏が呼応していく。

するとステージはまた一転。今度は少女と、彼女の母らしき女性(端田新菜)との会話が始まった。よさこい鳴子踊りをバックに、お祭りに行きたいとせがむ子とそれを収めようとする母のやりとりが続く。そしてよさこいとともに少女が消えていくと、取り残された女性は、追って現れた男性(大石)と共に、まるで遠い記憶の物語を語るように、列島が割れて大地が創造されていく様子を語っていく。

けたたましいデジタルのBGMと、山道弥栄(木ノ下歌舞伎)による義太夫三味線の音色の交差を経て、船頭(澤田)が一艘の船を漕いできた。雅楽「越天楽」が流れる中、荘厳な、幻想的な時間がステージに流れ続けている。

男と女は天体を見つめているようだ。男は宇宙の神秘と大地の創造の素晴らしさを語り、女はその雄大な時間の中で遠ざかる記憶を嘆いていく。「おおきなことも、ちいさなことも忘れてしまう。忘れたくないのに、遠くにいってしまう」「忘れてしまいたいことは、どんどんどんどん大きくなるのに」

雅楽による「君が代」が鳴り止むと、女は舞台の前方、つまり船の舳先に立ち、目前の海に広がる道の先を目指す。「おーい!」と聴こえてくる遠い声に呼び掛ける。本編の落陽と会場を照らす実際の落陽とが相まって、過去と未来が互いに呼び合う時間は、女の問い掛けで終焉を迎える。「ねえ……そっちから、こっちは、見えるの?」。

クライマックス。ステージでは「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」(曲:tofubeats)に乗って、出演者一同による総踊りが繰り広げられる。女と少女も手を取り合って踊っている。ステージを囲む美術館・中庭の池の水面が照明できらめいている。気付けば会場には夜の闇が降りていた。会場の客席を練り歩いた総踊りの列が、ステージの上でよさこい踊りの列と交わる。あたかも、そこが目指した新天地だったかのような晴れ晴れとした舞いが最後に披露されると、約1時間の本編は幕を閉じた。

終演後、木ノ下に話を聞くと、この日の戯曲は、『土佐日記』をベースに、高知とゆかりのある芸術作品のエッセンスによって編まれたということだった。また、北尾と共に熱っぽく語られたのは、二人の要望に対して何倍もの表現で応え続けた、高知在住のアーティストたちのポテンシャルへの賛辞だった。

高知の風土と歴史が育んだ土佐人の気質。個性豊かな文化。それらが過去と未来を繋ぐ想いと溶け合って、一夜の夢幻にも似た物語が生まれた。400人の観客の前で、叡知と生命力が放たれた「東京キャラバン in 高知」だった。

※1演劇において戯曲のリサーチや作品制作に従事する専門的な制作者を指す
※2地方ローカルのテレビ局主催という、全国でも稀有な形態からなる視聴者参加の野外歌合戦。1977年から2016年まで毎夏放送されていた

(取材・文/内田正樹)

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開催概要

開催日

〈パフォーマンス〉2018年9月16日

会場

高知県立美術館・中庭

リーディングアーティスト

木ノ下裕一(ドラマトゥルク・「木ノ下歌舞伎」主宰)

参加アーティスト

北尾亘(振付家・ダンサー・俳優・「Baobab」主宰)、高知県庁正調よさこいクラブ、カポエイラバトゥーキジャパオ高知(カポエイラ)、ふたりっこプロデュース(演劇)、繁藤雅陽会(雅楽)、山田太鼓伝承会(山田太鼓)、大石将弘(俳優)、澤田慎司(俳優)、米田沙織(ダンサー)、端田新菜(俳優)、安部萌(ダンサー)、山道弥栄(作曲家)

参加クリエイター

清川敦子(衣裳)、青木兼治(映像)、石川拓也(写真)

主催

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、高知県、公益財団法人高知県文化財団

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