豊田

TOYOTA

2018.7.22

サンバ。傀儡。棒の手。民謡。聖火ランナー。現代美術。
盛夏の鞍ケ池公園で“禁断”の出会いを果たした豊田の文化
  • 撮影:三浦知也

  • 撮影:三浦知也

  • 撮影:三浦知也

  • 撮影:三浦知也

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──猛暑の豊田で、みんなが踊った。

7月22日、愛知県豊田市・鞍ケ池公園プレイハウス芝生広場で「東京キャラバンin豊田」が開催された。いまにも気温が40℃に届くかという炎天下のなか、定刻の14時を迎えると、今回の指揮を執る“リーディングアーティスト”の近藤良平が登場、観客へ向けてこう挨拶した。

「豊田のアーティストと出会って、ひとつ、不思議な作品を作りました。子供たちも楽しんでもらえると思います。どうか軽い気持ちで観てください」

そんな親しみと期待を感じさせる近藤の言葉を合図にスタートした本編は、オープニングから賑わいを見せた。

ラテン調のリズムが聴こえてくると、傀儡師集団「GIANT STEPS」が操る巨大な怪鳥を先頭に、何やら楽しげな一団が入場してきた。サンバダンサーが踊っているかと思えば、ジャグリングをしながら行進している曲芸師もいる。

音楽を奏でているのは、チャンキー松本(歌と切り絵)率いる「チャンキー楽団」と、愛知で活動しているサンバチーム「RODA GIGANTE」の面々だ。

行進が終わると、ステージでは谷口界(パフォーマー)と操り人形のサイズをした骸骨の傀儡が、カバキーニョ(※ブラジル音楽で使われる弦楽器)の音色に合わせて、ユーモラスな掛け合いを見せる。大きな顔をした3体の傀儡たちも、コミカルな動きで客席を覗き込む。

続いては「豊田市棒の手保存会」の面々が、勇ましい掛け声を発しながら演舞を披露する。そこに4メートルはあろうかという長身の傀儡が登場し、棒の手の面々と戦いのような舞いを繰り広げていく。芝生のステージで、舞台美術となり、垣根や導線となり、場面転換の機能をも果たしている10枚の長方形のインスタレーションは、豊田市在住の現代美術家・山本富章の作品である。

今回、「東京キャラバン2018」に向けて、全体の監修を務める野田秀樹が発想したキーワードは『禁断の恋』、さらに近藤がこの日のために掲げたテーマは『我楽多(ガラクタ)』だった。ここからステージは、この二つの言葉が、より肉体性を帯びたパフォーマンスで表現されていく。

白いドレスを着けた入手杏奈(パフォーマー)が登場した。バレエやコンテンポラリーダンスをルーツに持つしなやかな舞踊は、時に軽やかに、時に妖麗に、観る者を魅了する。

突然、尺八の音に乗って聖火ランナーが入場してきた。彼の名は小林良一。1964年東京オリンピック開会式に向けて催された聖火リレーを走った、本物の聖火ランナーだ。ユニフォームも、当時着用した本物である。この「東京キャラバン」は、東京2020オリンピック・パラリンピックへと続く“文化オリンピアード”の一環だ。1964年から2020年へ、オリンピックへの精神性が、時を超えて託されたような束の間の場面だった。

本編は後半へと突入。豊田市内を中心に、日本民謡の演奏活動を続けている「芳泉会&民謡パラダイス」が“ドンパン節”を朗々と歌い上げると、そこへ「RODA GIGANTE」がサンバのリズムで応酬。さらに谷口と入手、サンバダンサーに近藤も乱入。生命力に溢れた混沌の様相に、多くの観客が手拍子を送っている。

途中、観客とのふれあいを買って出たのはチャンキー松本。軽妙な語り口と卓越した切り絵芸で、子供も大人も楽しませ、観客と演者の距離をぐっと縮めた。

そしてクライマックス。谷口、「GIANT STEPS」の傀儡たち、「豊田市棒の手保存会」が登場してパフォーマンスを披露すると、最後には入手と巨大な傀儡が出会い、まさに『禁断の恋』よろしく、束の間の逢瀬のような時間を紡ぎ出す。幻想的な余韻をステージに残すと、約1時間の本編は幕を閉じた。

最後にあらためて近藤が登場して、全ての参加アーティストを紹介。ここで終了かと思いきや、近藤は観客たちをステージへ呼び込むと、この日のために自ら考えた振り付けを指南して「みんなで「挙母小唄」を踊ろう」と提案した。「挙母小唄」は野口雨情が作詞し、かつて地元の芸者衆の間で歌われ、レコード化もされた歌である。タイトルの“挙母”は豊田市の旧名だ。盆踊りさながらに、演者も観客も輪になっての「挙母小唄」が場内にこだました。

こうして迎えたグランドフィナーレでは、オープニングでも披露したサンバ調のリズムに、この日のために書かれたオリジナルの歌詞を乗せた「東京キャラバンのテーマ」が奏でられた。

「♬〜踊ろう、東京キャラバーン!!」。炎天下の中、会場にいる者が入り乱れて歌い踊る様子はまさにカーニバルだ。たくさんの笑顔のなか、「東京キャラバンin豊田」は幕を閉じた。

普段はおよそ交わることのない文化と文化が出会うことで、一期一会のパフォーマンスという“文化の種”が生まれる。パフォーマンスを完成に導くのは、他でもない、観客の一人一人である。そんな「東京キャラバン」の醍醐味が、この上ない祝祭感で表現された「東京キャラバンin豊田」だった。

(ライター・内田正樹)

開催概要

開催日

2018年7月22日(日)

会場

鞍ケ池公園プレイハウス芝生広場

参加アーティスト

近藤良平(振付家・ダンサー・「コンドルズ」主宰)、豊田市棒の手保存会(棒の手)、RODA GIGANTE(サンバ・太鼓等)、芳泉会&民謡パラダイス(民謡・三味線等)、GIANT STEPS(傀儡)、小林良一(東京1964オリンピック聖火ランナー)、チャンキー楽団、(稲田貴貞/テナーサックス、小西英理/ピアノ・アコーディオン、坂口修一郎/トランペット、しみずけんた/カバキーニョ、チャンキー松本/歌・切り絵、南條レオ/パーカッション、ぽん宇都良太郎/ベース、岡田カーヤ/アルトサックス)、ダンサー・パフォーマー(谷口界、入手杏奈 ほか)

参加クリエイター

山本富章(現代美術)、中西瑞美(衣装)、青木兼治(映像)、三浦知也(写真)

主催

東京都、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、豊田市

協力

公益財団法人豊田市文化振興財団

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