撮影:コンドウダイスケ
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なまはげだってロマンスしたい!?
冬の秋田で繰り広げられた“禁断の恋”

公開ワークショップ

──野田秀樹、秋田で“交わる”。

現地での交流を通して、その土地や人について学ぶ。ワークショップを通じて、人と人、文化と文化の“出会い”から創作を構築していく。これらは東京キャラバンの大きな特色である。2019年2月16日(土)、17日(日)に開催された「東京キャラバン in 秋田」。そのパフォーマンスに向けて、総監修の野田秀樹率いる東京キャラバンのアーティスト・スタッフ一同による、秋田の文化を学ぶ現地視察と、地元のアーティストと初めて交流する公開ワークショップが、2018年12月7日(金)横手・秋田、12月8日(土)男鹿、12月9日(日)秋田で行われた。

まず一行は、12月7日に、横手市の旭岡山神社を訪問した。この神社は梵天を奉納する神社で、毎年2月17日(※ちょうど「東京キャラバン in 秋田」の2日目と重なる)に行われる旭岡山神社の梵天行事は、280年もの歴史を誇る伝統行事のお祭りとして知られている。横手では、古くから「ぼんでんが終わると春がやってくる」と言われている。冷たい雨が降る中、旭岡山神社までの険しい山道を登っていると、横手の人たちが雪から解放される春を心待ちにする気持ちが身近に感じられた。

一行は神社の歴史についてのレクチャーを受け、神前でパフォーマンスの成功を祈願した。帰り道、神社から降りると、この冬初となる雪が降り始め、どこからかリコーダーの音色が聴こえてきた。ちなみにパフォーマンス本編冒頭で朗読される『フジタの恋予告編』には、この時、麓にあった葡萄畑や、そこに広がる横手の日常の風景が登場している。

続いて訪れたのは秋田県立美術館だった。一行は同館でレオナール・フジタこと藤田嗣治の壁画《秋田の行事》を鑑賞した。秋田の資産家・平野政吉の依頼を受けた藤田が1937年(昭和12年)に僅か15日間で描いたという巨大な絵には、当時の秋田の人々の春夏秋冬の日常と祭事が丹念に描かれている。日常(暮らし)と非日常(祭事)の境界として描かれているのは、高清水丘陵にある香爐木橋だ。また、かまくらの中に描かれている二人は、藤田が角館で出会い惹かれた仙北歌踊団の少女だという。今日まで脈々と受け継がれている秋田の日常と伝統が、野田の創作意欲に火をつけた。

12月8日、一行はなまはげとの創作を前に、男鹿市の赤神神社五社堂を訪問した。なまはげが祀られていると伝承されている同社の“赤神”とは、漢の武帝が連れてきた5匹のコウモリが、5匹の鬼に姿を変えたものだといわれている。

日本海からの強風と雪が吹き上げる中、石段を登っていると、この厳しい環境の中で石段を積み上げることがいかに大変だったか、鬼だからこそ積むことができたのではないかと、一行は思いを巡らせた。

次いで訪れた男鹿真山伝承館では、なまはげの由来についてのレクチャーを受け、なまはげのパフォーマンスも体験した。生の迫力に一同は大きな刺激を受けた。さらに、なまはげとは子供を怖がらせることが本来の目的ではなく、家内安全、無病息災を願い、その集落が末永く安泰でいられるよう、怠け心を戒める役割を持っているのだということも教えられた。

また、さらになまはげ館では110体に及ぶ多彩ななまはげの展示を鑑賞した。なまはげは町ごとに多様に存在しており、それぞれの地域で大切にされ、生活に根付いているのだという。視察中、どの場所にいても、つぶさにメモを取っている野田の姿が見られた。

あらためて真のなまはげの魅力を知ると、秋田の人たちにとって、なまはげが大切な存在であるかということを思い知らされた。

高揚感を得た一行は、男鹿市民文化会館・小ホールで公開ワークショップに臨んだ。
「“文化”の“文”は“交”という字に近い。(東京キャラバンには)“こういう結果をつくらなきゃいけない”という形はない」
冒頭、あらためて野田から東京キャラバンの精神が参加者一同に伝えられた。今回は男鹿のなまはげのほかにも、2017年「東京キャラバン in 熊本」に参加したことから大いに刺激を受けたという山鹿灯籠踊り保存会が、更なる“文化混流”を求めて熊本から雪の秋田に駆け付けた。さらに姉妹デュオのチャラン・ポ・ランタンと、変幻自在な身体表現を誇る“東京キャラバン”アンサンブルが、それぞれにパフォーマンスを披露した。

観る者の魂を揺さぶるようななまはげのうなりと太鼓。優美な灯籠踊り。軽快なリズムとメロディの中にも郷愁と哀愁が感じられるチャラン・ポ・ランタン。言うまでもなく、これまで同じ舞台で見ることなど、まずなかったはずの組み合わせである。

この日のワークショップには、吹雪の中にもかかわらずたくさんの観客が訪れて、熱心に見学をしてくれた。パフォーマンス開催地の横手市から2時間かけて来場した方もいたそうだ。

翌日の9日は、秋田市民交流プラザ ALVEに場所を移し、公開ワークショップの2日目が行われた。この会場は、東京キャラバンの醍醐味の一つである「創作の現場を生で見せる」のにこの上なく適する環境だった。

まず、4、5階分の高さがある吹き抜けの天井に届きそうなほど長い竿燈を用いた、秋田市竿燈会のパフォーマンスに観客が沸き立った。さらに日本民謡梅若流梅若会による朗々としたドンパン節をバックに、野田が役者たちのパフォーマンスを即興で演出していく。秋田市竿燈会と前日から参加している男鹿のなまはげ、山鹿灯籠踊り保存会、チャラン・ポ・ランタンらによって、次々に見たこともないコラボレーションが繰り広げられていった。

こうしてワークショップの終盤には、ショーケース(※パフォーマンスの通し稽古)が行われた。このショーケース冒頭で、野田が秋田で得たインスピレーションをもとに書いたテキスト『フジタの恋』が朗読された。これは野田が前述の秋田県立美術館で鑑賞した、藤田嗣治の《秋田の行事》に触発されて書き下ろしに臨んだものだった。これを皮切りに、参加アーティスト各々が放つ表現の連鎖によって、およそ40分にも及ぶ濃密なパフォーマンスが繰り広げられた。

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パフォーマンス

──野田秀樹、“禁断の恋”を描く。

2019年2月16日(土)、17日(日)、秋田県横手市の秋田ふるさと村・ドーム劇場にて「東京キャラバン in 秋田」が開催された。今回の「東京キャラバン in 秋田」を率いるのは、東京キャラバン全体の総監修者でもある野田秀樹である。

定刻を迎えると、まずおかっぱ頭に眼鏡をかけた青年が舞台に現れ、本を片手に、『フジタの恋』と演目を告げる。その佇まいは、かつてこの地で巨大な一大壁画《秋田の行事》を描いた画家・藤田嗣治を想起させる。彼は本を開くと、そこに書かれた戯曲を朗読していく。

「渡ってはいけない橋があるように、決して渡ってはならない恋がある。」(『フジタの恋予告編』より抜粋)

この『フジタの恋』は、野田が《秋田の行事》を観て着想を得た“妄想”をもとに、今回のために書き下ろされた。そのストーリーは、野田が2018(〜19)年の豊田・高知・秋田全体にかかるキーワードとして標榜していた“禁断の恋”を想起させる。

舞台に大きな紙が渡されると、それは川の水面に姿を変える。一つの小道具が何通りもの機能を果たす。野田が演劇において得意としている演出である。

なまはげ太鼓を合図に紙を突き破って現れたのは、桃色の衣を纏った般若たち。するとその舞に誘われるように、客席から、なまはげたちが姿を現した。勇ましいなまはげ太鼓の連打に乗って般若たちが妖艶に舞い踊る。序盤から不思議な祭りのような様相の舞台に客席の視線は釘付けだ。

次いで現れたのは頭に灯籠の灯を掲げた和装の女性たち。九州・熊本から参加の山鹿灯籠踊り保存会である。太鼓、鼓、笛と三味線の奏でる「流し」に乗せた雅やかな踊りの中を縫って、舞台上には、秋田や横手にちなんだ店名もユニークな、スナック、純喫茶、居酒屋の電飾看板が持ち込まれる。

やがて“東京キャラバン”アンサンブルの手によって四方に張られた桃色のゴムの中に、姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンの二人の姿が。姉の小春の奏でるアコーディオンの音に乗せて、妹のももが歌い始めたのは、「サーカス・サーカス」。そのノスタルジックなメロディと電飾看板が相まって、ひととき、情緒と郷愁が会場に漂う。

すると、ももの矢を放つようなゼスチャーによってハートを射抜かれ、ノイズの爆音を轟かせたのは現代美術家・宇治野宗輝。彼が披露するのは、ステーションワゴンの電動ミラーやワイパーのモーター音をマイクで拾い、エフェクトをかけ、手元のシーケンサーで出力を操作するというインスタレーションだ。雄叫びや唸り声のようなノイズ音。目のように点滅を繰り返すウインカーとランプ。まるで意志を持った生き物のようだ。

ももからのバトンを回すように、次に宇治野が矢を放つゼスチャーで呼び込んだのは、タップダンサーの熊谷和徳である。車の屋根に飛び乗り、宇治野のインスタレーションと息もぴったりの軽快なタップを奏でると、舞台中央に躍り出て、踵とつま先を細かく打ち鳴らし、リズムを自在に変えながら、繊細にして緻密なメロディを奏でていく。

そして熊谷が放った矢はチャラン・ポ・ランタンへ。二人が自身のレパートリーである「ハバナギラ」を朗々と歌っていると、宇治野のインスタレーションが雄叫びを発し、男鹿のなまはげたちが現れて、彼女たちの歌に割って入った。

「いつまで歌ってんだ!?いい加減にしろ!」。一人のなまはげが発した言葉に、ももは名曲「愛の讃歌」で応える。愛を伝えるももの歌声と投げキッスに、最初はコミュニケーションを拒んでいたなまはげも、遂にはももをお姫様抱っこ!滅多に見られないコミカルななまはげの動きに観客からは笑いが起こった。チャラン・ポ・ランタンからの愛を受け取ったなまはげたちは「また来年もまた来るからな!」と言葉を残し、客席から去っていった。

桃色の紗幕が舞台を一転させると、日本民謡梅若流梅若会が民謡「ドンパン節」を歌う。3人のアンサンブルは、歌詞に合わせてゴムを引っ張りながら大工のようなアクションを見せる。そのまま一同は「秋田音頭」を歌い、さらには「秋田大黒舞」を、何と再び現れた熊谷とコラボレーション。秋田民謡とタップダンスというレアな組み合わせは、まさに“文化混流”をモットーとする東京キャラバン“だからこそ”の醍醐味だ。

熊谷が独演に入ると、舞台後方の壇上に、甲冑姿の書道家・青柳美扇が仁王立ちで現れる。熊谷のタップが鳴り響く中、何色ものアクリル絵の具を混ぜた特製の墨と特大の筆で、パネルに炎の絵を描き、文字を書き進めていく。それが“フジタの恋”と読めた頃、熊谷のテンションも最高潮に。観客は大きな拍手で二人を讃えた。

ここでさらにまた舞台は一転。『フジタの恋』を朗読するのは、女優・黒木華である。彼女の朗読に合わせ、橋のように左右に渡された紗幕はやがてスクリーンとなり、かつての秋田の人々の暮らしが影絵のように映し出されていく。黒木の朗読は力強く、「古井戸の底」に住むという少女に、フジタは“禁断の恋”をしてしまう。倒れこむ竿燈。燃え盛る業火。川に流されていく少女に黒木が花を手向ける。「遠き山に陽は落ちて」のメロディをバックに、遠い記憶のような戯曲は幕を閉じた。

クライマックスは秋田市竿燈会による二本の竿燈が登場。「どっこいしょー、どっこいしょ!」という大きな掛け声に、舞台に出て来た全ての出演者と観客が手拍子を合わせる。46個の提灯が吊るされた“大若”と呼ばれる竿燈は、長さが16メートル、重さは50キロにも及ぶ。それを差し手は絶妙なバランス感覚で、手のひら、額、肩、腰で支え、最後には2本の竿燈を向かい合わせて、大きく反り返らせる大迫力の竿燈さばきを見せた。

そしてフィナーレ。小春のアコーディオンに乗せて、ももがあらためて出演者を紹介していく。舞台後方、劇場のスライド式の壁が開かれると、そこには灯りをともした小さなかまくらが無数に広がっていた。

かまくら祭りを開催している横手市の横手南中学校の生徒たちが作成した、500個にも及ぶミニかまくらの幻想的な美しさもまた、この「東京キャラバン in 秋田」の醍醐味の一つと言えるだろう。最後に、ももが客席からパフォーマンスを見守っていた野田を紹介すると、観客から大きな拍手が送られた。

本編およそ1時間10分。出演者総勢73名。観客延べ1,731人(※公開ゲネプロを含む上演全4回分の観客数の合計)。出会いの数だけ、アーティストの数だけパフォーマンスが生まれる。それが「東京キャラバン」である。しかしながら2日間にわたって繰り広げられたこの「東京キャラバン in 秋田」は、豊田、高知と上演してきた「東京キャラバン2018」の、まさに集大成とも言える出来栄えとなった。

(取材・文/内田正樹)

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開催概要

開催日・会場

〈公開ワークショップ〉
2018年12月8日 男鹿市民文化会館・小ホール
2018年12月9日 秋田市民交流プラザALVE・きらめき広場

〈パフォーマンス〉
2019年2月16日-17日 秋田ふるさと村・ドーム劇場

監修

野田秀樹(劇作家、演出家、役者)

参加アーティスト

黒木華(女優)、熊谷和徳(タップダンサー)、チャラン・ポ・ランタン(アーティスト)、青柳美扇(書道家)、宇治野宗輝(現代美術家)、“東京キャラバン”アンサンブル〈秋草瑠衣子、石川詩織、上村聡、川原田樹、近藤彩香、末冨真由、手代木花野、夏子、福島彩子、的場祐太、吉田朋弘〉、秋田市竿燈会、男鹿のなまはげ、二代目浅野梅若(民謡)、絵どうろう、山鹿灯籠踊り保存会

参加クリエイター

名和晃平(美術・空間構成)、服部基(照明)、原摩利彦(音楽)、ひびのこづえ(衣装)、赤松絵利(ヘアメイク)、青木兼治(映像)、コンドウダイスケ(写真)

主催

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、秋田県、横手市

事業協力

公益財団法人熊本県立劇場

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