北海道ワークショップ

HOKKAIDO WORKSHOP

2019.12.21-22

歴史を知る、直に触れる。
人々と出会う。文化が交わる。
「東京キャラバン in 北海道」公開創作ワークショップ
  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

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  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

  • 撮影:篠山紀信

2020年1月のパフォーマンス本番に先駆けて、2019年12月20日から22日まで、野田秀樹、木村カエラ、東京キャラバンアンサンブルら出演者及び関係者、そして写真家の篠山紀信は、北海道を訪れていた。

1日目(12月20日)

東京から訪れた一行は沖縄から駆けつけた琉球舞踊チーム、そして北海道のスタッフらと合流し、まずバスに乗って札幌市アイヌ文化交流センター サッポロピリカコタンを訪れた。同所は2階建ての敷地にアイヌ民族の生活や歴史、文化を学べる様々な展示を観覧することのできる施設である。札幌市内の小中高校生や市民を対象にした体験学習や料理会などの様々なイベントが行われている。

一行はまず同所の学芸員から「イランカラプテ」というアイヌ語の「こんにちは」を教わり、互いに発声して挨拶を交わした。そして、館内の見学がスタートした。

展示室には、かつてアイヌの人々が使用していた衣類、生活雑貨、楽器など、直に見て、触れられる展示や映像資料が常設されている。

様々な交易品や衣類、装飾品からは、中国、ロシア、本州の人々との物流(物々交換)によって、アイヌの人々の暮らしぶりがどう変わっていったかが読み取れる。アイヌ語の特徴や、現在日本で使われている文化や言語に与えた影響を知ることもできる。野田はそれらを興味深く観察し、メモをとる。その様子を、篠山はカメラでつぶさにとらえていった。

また、屋外には人々が暮らしていた家屋(チセ)や倉(プ)、外洋船(イタオマチブ)などの再現展示もある。一行は雪の降る中、学芸員からの説明を受けながら楽しく展示を見て回った。一行が特にハマったのが“ムックリ”だった。付属の紐を引っ張って弁を震動させ、口腔で共鳴を起こすことで「びぃーん」と特徴的な音を発する竹製の楽器を、野田も木村も楽しみながらマスターしていた。

続いて一行が訪れたのは北海道博物館だった。同館の総合展示では、「北東アジアのなかの北海道」、「自然と人とのかかわり」をコンセプトに、北海道の自然・歴史・文化が、5つのテーマで分類されている。

北海道とは、日本地図上では「日本の北側の大陸」という一情報のみを認識しがちだ。しかし世界地図上でよく見ると、実際には北東アジアの文化・貿易交流の交差点という位置と機能を担っていたことが分かる。

そうした基礎知識が学芸員から解説されると、一行は豊富なパネル資料、絵画、弓や土器、土偶、調度品などの遺跡・復元資料や模型などによって、オホーツク文化の広がりから函館の開港、今日の生活の影響までを駆け足で学んでいった。

そしてこの日の最後は、1月のパフォーマンスの会場となるモエレ沼公園ガラスのピラミッドを訪問した。途中、雪による交通渋滞に見舞われ、予定時刻を大きく遅れての到着となったが、野田をはじめとするアーティストと制作スタッフの面々は、舞台となるロビーの広さ、音の反響、スケルトンのために望める公園敷地内の風景などを直に感じ取り、意見を交わしたのだった。

2日目(12月21日)

この日は公開創作ワークショップである。会場は札幌からバスで1時間ほどの白老郡白老町本町にある白老町中央公民館・コミュニティセンターだ。この白老町は、2020年4月、アイヌ文化のナショナル・センターとなる「民族共生象徴空間(ウポポイ)」がオープンする町である。

午前中、一行はまず、公益財団法人アイヌ民族文化財団と白老民族芸能保存会の面々から、アイヌ古式舞踊のパフォーマンスで歓迎を受けた。前日に体験したムックリの演奏を交えながら、次々にアイヌの歌と踊りが披露されていく。

かつてアイヌの人たちは祭りや儀式など人が集まる機会に歌い踊った。その多種多様な踊りには狩猟や採集の対象だった動植物をモチーフとする振付などがあり、娯楽の要素や神々への尊敬、御祓などの意味が込められていたという。

弓や刀を用いた振付や衣服を鳥の羽のように羽ばたかせる踊り、向かい合い、やがて輪になる構成など、一行は歌と手拍子にのせて披露される踊りを興味深く鑑賞した。

観賞後、野田と木村は踊り手たちと質問や感想などの会話を交わし、昼食時は白老町の方々の御好意で振る舞われたアイヌ料理「オハウ」(※鮭や大根、人参などが入った汁物)を皆で御馳走になった。

午後になると、公開創作ワークショップが始まった。野田とアンサンブルは、野田の特徴的な演出のひとつであるスローモーションの動作から、徐々にエンジンをかけていく。そして野田が集まったアーティスト一同に「新しいものを作ろうという気持ちです(中略)こういう混じり方もあるのか、と、広い心で参加してほしい」と呼びかけると、一同から笑いが起こった。

この日の観覧は入場無料、事前予約不用、出入り自由という環境だった。まず一同は詰めかけた観客の前で、アイヌ古式舞踊、琉球舞踊、江差追分を順に披露する。それを見ながら、野田がアーティスト、アンサンブルの各々と意見を交わしていく。

次いで、沢則行の魚や貝の人形が交わると、木村が戯曲「誕生日〜記憶の岸辺」を朗読し、山木将平のギターに合わせて「トゥモロー」を歌った。「誕生日〜記憶の岸辺」は、今回のために野田が書き下ろしたものだ。

野田、沢、そして公益社団法人北海道アイヌ協会の秋辺日出男らが中心となって、各々が積極的にアイデアを出し合う。男鹿のなまはげは、訪れた子供や保護者の大人たちの人気者だった。さらにアイヌの踊りが幾つか披露され、皆で輪になってアイヌの歌を歌ってみる。

そうした幾つもの試みを経ると、終盤にはパフォーマンスの構成が具体性を帯びていた。和やかな空気のなか、今回限りのパフォーマンスが組み立てられていった。

3日目(12月22日)

最終日の公開創作ワークショプは、会場を札幌市中央区のサッポロファクトリーホールに移して、11時から公開された。この日も観客は入場無料、事前予約不用という形での公募だったが、実際には約300人の観客が集まった。

この日も撮影を篠山紀信が担当。様々な角度から舞台の様子をカメラに収めていく。午後に公開されたショーケース(※パフォーマンスの通し稽古)の演出は、ほぼ1月のパフォーマンスに近い形の断片まで詰められていた。訪れた観客は一様に舞台で繰り広げられる様々なアーティストのパフォーマンスとその融合に集中し、最後は拍手を送った。

アーティスト各々が1月のパフォーマンスへのモチベーションを高め、3日間の充実した公開創作ワークショップは幕を閉じたのだった。

歴史を知り、直に触れる。人々と出会い、文化が交わる。そうした極めて基本的な学びの時間が東京キャラバンin北海道という舞台を組み立てていく。

無論、そうした経験の全てが、実際の舞台上で聞き取れる言葉や目に見える動きで表現されるわけではない。だが、アーティストそれぞれの意識下や全体のチームワークには、数値化できないほどの作用を及ぼし、パフォーマンスの重要な土台となっていくのだ。

そして何より、その土地の歴史や風土、過去から現在を生きる人々へのリスペクトが、参加した各々の心に自然と刻まれていく。それは歴史を継ぎ、文化を繋ぐための重要なアクションではなかろうか。東京キャラバンという“場”の特性が、意義が、あらためて直に感じられた3日間だった。

(ライター・内田正樹)

開催概要

開催日時・会場

2019年12月21日(土)13:30~17:00
白老町中央公民館・コミュニティセンター(北海道白老郡白老町本町1丁目1-1)

2019年12月22日(日)11:00~17:00
サッポロファクトリーホール(北海道札幌市中央区北2条東3丁目)

参加アーティスト

野田秀樹(劇作家・演出家・役者)、木村カエラ(アーティスト)、“東京キャラバン”アンサンブル、沢則行(人形劇師)、公益社団法人北海道アイヌ協会(アイヌ古式舞踊)、ライリー大仁(江差追分)、琉球舞踊(立方:阿嘉修、佐辺良和、大浜暢明、玉城匠 地謡:玉城和樹、和田信一)、男鹿のなまはげ、ほか

主催

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、北海道

協力

北海道舞台塾実行委員会(公益財団法人北海道文化財団・北海道)

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