いわき

IWAKI

2019.5.19

やっちき、じゃんがら、フラガールにファイヤーダンス
春のいわきで生まれた、見たことのなかった“郷土愛”
  • 撮影:上石了一

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  • 撮影:上石了一

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  • 撮影:上石了一

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──小名浜港の海風に祝福されて、見たことのなかった“郷土愛”が躍動した。

2019年5月19日(日)、福島県いわき市小名浜のアクアマリンパークにて「東京キャラバン in いわき」が開催された。今回のリーデイングアーティストは、近藤良平。2017年10月の熊本、2018年7月の豊田に続いて3度目の担当だ。

小名浜港を背にした特設ステージには、2台のトレーラーステージが置かれている。トレーラーの壁面に吊られているのは、地元の漁船の大漁旗だ。去る2011年の東日本大震災の際には、今では穏やかなこの会場の敷地も震災の被害が襲ったという。

まず近藤からの挨拶があり、今回のメインバンドを務めるチャンキー楽団(小西英理、坂口修一郎、しみずけんた、南條レオ、ぽん宇都良太郎、岡田カーヤ)と、じゃんがら念仏踊りの下綴青年会、そしてダンサー(小林らら)が登場する。

いわきの郷土芸能であり、地元の夏の風物詩としても知られるじゃんがらは、鉦、太鼓を打ち鳴らしながら新盆を迎える家々を供養して回る踊念仏(おどりねんぶつ)の一種である。そのじゃんがらの太鼓に呼応して、ダンサーが踊る。やがて両者の動きはシンクロしていく、早くもステージに緊張感が生まれる。

チャンキー楽団の演奏にのって、上三坂やっちき踊り保存会が現れる。盆踊りの一種であるやっちきは、もとは男女の求愛のための、言わば“歌垣”の踊りだった。そんな「いわきやっちき踊りの唄」の中から5つの唄が披露される。歌詞には、ちょっと際どい艶っぽさやユーモアに富んだくだりもある。楽団のジャジーな演奏と交わることで、やっちきが新たな演劇表現のような躍動を帯びていく。さらに踊りの傍らでは、チャンキー松本が次々とライブドローイングによって幾つもの絵を描いている。

そこへ、何とラップが融合する。小名浜で活動するHip Hopクルーのオナハマリリックパンチラインの面々だ。彼らは自身のナンバー「小名浜COLOR」のリリックを用いでて、郷土愛と祭りへの賛同を呼びかける。その名の通り、思わずハッとさせられる“パンチライン”(決定打)が繰り出されていく。楽団、やっちき、ラップ。その独創的なグルーヴがひとしきりの盛り上がりを見せると、観客から拍手が送られた。

ステージは一転、下綴青年会から三人の太鼓が現れた。繊細にして雄々しい、一糸乱れぬ演奏とステップに、再び観客からは拍手が送られる。

そして聴こえてきたのは1942年のミュージカル主題歌「インディアン・ラブ・コール」だ。所狭しと、ダンサーの二人(小林、大西彩瑛)が、笑顔を浮かべながら、伸び伸びとした舞を繰り広げていく。二人と入れ替わる形で登場したのは、スパリゾートハワイアンズダンシングチームだ。

長年に渡って地元経済に貢献してきたスパリゾートハワイアンズは、2006年公開の映画『フラガール』の舞台としても有名だ。そのチームが、軽快なリズムにのって、腰を激しく振り、情熱的なポリネシアンダンスで観客を魅了する。次いでスパリゾートハワイアンズファイヤーナイフダンスチームSiva Olaも登場し、燃え盛るファイヤーナイフを、勇猛果敢な手捌きで身体にくぐらせ、頭上高く放り投げてキャッチ。豪快な妙技に観客からも思わず喝采が飛んだ。

再び入れ替わる形でスパリゾートハワイアンズダンシングチームが登場。チャンキー楽団による「サモア島の歌」と共に踊る優美なサモアダンスが、客席に南国の爽やかな風を運んできたかのようだった。
ここでステージにチャンキー松本が登場。観客の親子連れを呼び込み、軽妙な語りと見事な切り絵で、観客と和やかなコミュニケーションを交わした。

本編は後半へと突入する。近藤が登場して、キャストや観客を呼び込み、その場で振り付けを指導し始める。彼は「いわき市歌」にオリジナルの振り付けを考案したのだ。チャンキー松本がボーカルとなり、ステージの皆がひとつになって、いわきに注ぐ明るい光や海のパワーを、全身でポジティブに表現してみせる。気付けば踊っている者は皆が自然と笑顔になっていた。

「いわきの未来は明るい。そしていわきの空は広い」。そう近藤が叫ぶとじゃんがら太鼓が登場。近藤やダンサー(小林、大西)たちとのセッションに興じた。

フィナーレに差し掛かったステージにラップがこだまする。もう一度オナハマリリックパンチラインが登場、小名浜の過去・現在・未来に思いを馳せたナンバー「Respo」で、地元愛と漢気を観客へと刻んだ。
やがて下綴青年会の面々がステージを練り歩き、仏の供養だ皆で踊ろうと、太鼓に乗せて「じゃんがら念仏踊り 内郷下綴フルバージョン」が歌われ、彼らの間を縫って近藤が踊る。気付けば念仏踊りとチャンキー楽団の奏でる音が融合し、ダンサー(小林、大西)たちも交ざって、またも独創的なグルーヴが奏でられると、チャンキー楽団による「Welcome to the party」をバックに、再びスパリゾートハワイアンズファイヤーナイフダンスチームSiva Olaのファイヤーダンスが繰り広げられた。

そして迎えたフィナーレ。チャンキー松本が本編中に描いていた演者たちのライブドローイングも完成。この日のためにチャンキー松本とチャンキー楽団が作ったという「ゴスペルいわき」が歌われた。

この曲の歌詞には、聖徳太子が唱えた17条憲法の言葉を引用した「和をもって尊し いわき」というくだりがある。十七条憲法の一節「以和為貴(和をもって貴しとなす)」は、いわき市の市名の由来である。いわきについてリサーチし、「旅する人とずっとそこにいる人」をテーマに、いわきの様々なエッセンス、さらには東日本大震災のエッセンスを取り入れた歌だった。

昭和41年、いわき市は、当時はまだ前例のなかった14市町村の大同合併を果たした。十七条憲法を由来とする市名には、市の一体的な将来の発展への願いが込められたのだ。

「和をもって尊し いわき いわき」。参加アーティスト一同と観客とのコール&レスポンスで「東京キャラバン in いわき」は幕を閉じた。多種多様な伝統文化と人々の営み、さらには現代的な表現が、音楽と身体表現で混じり繋がれ、これまでなかった郷土愛のパフォーマンスへと結実した、そんなひと時の宴だった。

(ライター・内田正樹)

開催概要

開催日時

2019年5月19日(日)15:00

会場

アクアマリンパーク内特設会場(福島県いわき市小名浜辰巳町地内)

参加アーティスト

近藤良平(振付家・ダンサー・「コンドルズ」主宰)、チャンキー楽団(小西英理/ピアノ・アコーディオン、坂口修一郎/トランペット、しみずけんた/カバキーニョ、チャンキー松本/歌・切り絵、南條レオ/パーカッション、ぽん宇都良太郎/ベース、岡田カーヤ/アルトサックス)、ダンサー・パフォーマー(大西彩瑛、小林らら)、オナハマリリックパンチライン(ラップグループ)、上三坂やっちき踊り保存会、下綴青年会(じゃんがら念仏踊り)、スパリゾートハワイアンズダンシングチーム、スパリゾートハワイアンズファイヤーナイフダンスチーム Siva Ola、いわき絵のぼり、大漁旗

参加クリエイター

中西瑞美(衣装)、青木兼治(映像)、上石了一(写真)

主催

東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、いわき市

協力

小名浜まちづくり市民会議

映像

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